些末なこと

何の役にも立ちません

『ジョジョ・ラビット』を観たこと

小学生の時、アンネ・フランクの伝記や『アンネの日記』に傾倒していた。理不尽な迫害や見つかるかもしれない恐怖、彼女と家族を待ち受ける最期を知っていても、あの日記は少女心に憧れだった。古い装丁も素敵だった記憶がある。タイプライターで打ったみたいなフォントで、本当にアンネが書いたみたいだなと思っていた。

そんなこともあって、ナチスやホロコーストには関心を持っている方なのだけど、絶対に落ち込むのが分かっていたので観るのを躊躇していた。でもやっぱり、と思って無理やり予約をして観にいったら…予想通り辛かったけれど、それでも観て本当に良かった。

悲惨さやむごさは極力抑えられていて全編に溢れたユーモアとのバランスが絶妙だった。だから余計に権力統制や市民感情の暴走、戦争を繰り返しちゃいけないと思わされるし、絶望的な状況下でも気の持ちようで人を信じ、前向きに生きられるんだと教えてくれる。少数派だったとしてもおかしいことはおかしいと思うべきだと。

「靴」や「ナイフ」や「ダンス」、それからジョジョが見聞きしたことが全部伏線になっているのもたまらない。スカーレット・ヨハンソン演じる母のお茶目さと信念も、ヒトラーの滑稽さも、憎めない大尉も、こどもたちの健気さも、哀しくてたくましくて、泣けた。人は決して一面的ではないんだと改めて思う。

震災直後に聞きに行った高橋源一郎さんと森達也さんの対談で、森さんが「100人中99人が同じ方向を向いていたら正しいかどうか疑ったほうがいい」と言っていたことも思い出した。